宮
試
名器中の名器、スリンガーランドのラジオキングの中にあって、
ストリームライン・ラグの8テンション、
14"×5.5"、1948年〜1950年製造(ラージ・オーバル・バッヂ)という希少なスペックを誇るこのモデルは、
もはや神格化されているヴィンテージ・ラジオキングの中でも“ベスト”と呼べるものだと思います。
ジェフ・ポーカロは、TOTOはもちろん、LAのスタジオ・シーンで、
おそらくほぼ同年代のスネア(ジェフのは深さ6.5"でしょうか)を使っていたと思いますが、
彼の愛器はかなりカスタマイズされていたにせよ、楽器としてのトータル・バランスが素晴らしいということの証でもあります。
要するに“いい時代のラジオキング”ということですね。
この個体、メル・トーメ(Mel Torme)氏が愛用していた逸品とのことで、
ちゃんと写真付きの証明書がついています(何と!『The Slingerland Book』にも御本人の写真と共にこのスネアが掲載されています!)。
メル・トーメ氏は、フランク・シナトラと共演歴もあるドラマーで、
さらにジャズ・シンガーであり、ジャズの作曲家・編曲家であり、俳優としても活躍したという著名な方です。
そんな彼の愛器だったということで、“お宝スネア”は確定ですが、特筆すべきはそのサウンドにありました。
まずはチューニング・レンジの広さ、ロー・ピッチでもハイ・ピッチでもとにかくその音色は圧倒的な説得力です。
そしてショットに対する反応が敏感かつ大胆で、軽く触った極小音から、ぶっ叩いたときの破裂音まで、
すべてがもう“音楽的な音色”になってしまうんです。
演奏していると「自分は何でもできるんじゃないか?」という錯覚に陥るほどに超ご機嫌なんです。
シェルは上質なメイプルの単板+レインフォースメントで、
内面を覗くと美しいバーズアイの杢目に心を奪われます。
本当に素晴らしいです。
ブラスのストレート・フープ(ダブル・フランジ)も綺麗ですね。
テンション・ボルトも何もかも、コンディションは最高です。
個人的にこれまで数あるラジオキング・スネアを試奏してきましたが、
間違いなく、これがダントツの最高峰です。
いつまでも、いつまでも叩いていたいと思わせてくれる魅惑の音色。
つい先頃、このスペックを再現した復刻モデルが限定で発売されましたが、
やっぱり“本物”は、何から何まで違いますね。別格でした!
|