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1959年と1960年のわずか2年弱の製造で姿を消したという“幻の名器”ラスベガス・モデルです。
このラスベガスに比べれば少しだけポピュラーな存在である13"×3"のジャズ・コンボ・モデル(こちらも名器!)との違いは、
深さが1インチ増えた13"×4"というサイズと、インナー・マフラー(内蔵ミュート)が装着されていることの2点で、
口径13"はもちろん、シェル材やテンション数(6テンション)などは共通となります。
ちなみにラディック社のカタログには(私の知る限りですが)、1960年版に掲載されているだけだと思います。
ちなみに写真も含めて、ラスベガス・モデルは、トランジション・バッヂ装着のものしか見たことはありません。
個人的にラスベガス・モデルの存在を知ったきっかけは、スティーヴ・ジョーダンです。
キース・リチャーズ&ザ・エクスペンシヴ・ワイノーズでの一連の活動(ライヴとアルバム両方)や、
デヴィッド・サンボーンの名盤『アップフロント』での魅惑のサウンド……圧倒的なヌケの良さ、
太く、温かな、まさにワン・アンド・オンリーなサウンドの正体は、このスネアだったんです。
そしてドラム映像作品『the groove is here』撮影時に、まさに目の前で体感したその生音は、とにかく絶品で、素晴らしいものでした。
本器は1959年3月17日製造(シェル内面にMAR 17 1959のスタンプあり)、
シェルはマホガニー/ポプラ/マホガニー3プライ+メイプル(単板)レインフォースメントで、
そこに新品なんじゃないかというレベルの美しいブルー・スパークルのオリジナル・ラップが完全密着でついています。
フープはピカピカの1stジェネレーションのブラス・フープで、
ラグなども含めてクローム・メッキ仕様となっています。
スナッピーもオリジナルのプラスチック・エンドの12本がついているもの嬉しいですね。
試奏では現行のレモ・ヘッドで行っていますが、上下オリジナル・ヘッドも付属するという、信じられないレベルのコンディションです。
サウンドは、個人的に慣れ親しんでいるジャズ・コンボとちょっと違いますね。
わずか深さ1インチの差が、全体としての太さを倍増させているようです。
そもそも深さ3インチのジャズ・コンボも13"スネアの範疇を超越した太さを持っているのですが、
深さ4インチのラスベガスは、そこにまろやかな柔らかさが加わるんです。
また、スネア・ベッドも幅が狭く深めにえぐられているので、スナッピーがいい塩梅で止まってくれるのも特徴ですね。
13"ならではのヌケ感は強くありつつも何にでも使える守備範囲の広さを併せ持っています。
いやーいいスネアです!
超希少なラスベガス、しかもこんな状態の良いものは二度とお目にかかれないでしょう。
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